過酷に思われがちな「ひとり情シス」による運用は、本当に不幸なのか?
近年の業界ワードの一つが「ひとり情シス」。1人(または2~3人程度の少人数)で、システム運用を始めとする、さまざまな業務を担当する企業の情報システム部門や、所属するITエンジニアの現実を物語る言葉です。今回は、このキーワードをきっかけとして、システム運用の改善について考えてみましょう。
まず、「ひとり情シス」といっても2つの側面があります。一つは、IT業界全体で人材が不足している中で、情報システム部門に十分な人や予算が割り当てられず、たった1人で多様なIT業務をこなさなければならない、過酷かつネガティブな面。もう一つは、マルチクラウド環境でも自動化できる運用サービスを利用し、徹底的に効率化されたポジティブな面です。文脈の中で、どちらでも使えるのが特徴的なワードです。
「ひとり情シス」の現状
情報システム部門は、日頃の業務にITシステムを導入している組織の多くで設置されています。IT知識を持つ少数の技術者が、所属部門を超えて兼任していることもあります。「ひとり情シス」の状態は、従業員数が数人~数十人程度の小・零細企業や、起業したばかりのスタートアップでは、珍しくはありません。しかし、従業員数が100名以上の中規模企業でも、わずか1人の情報システム担当者が、その組織のシステム全体を支えている場合もあります。
Dell EMCが、国内約800社の中堅企業を対象にした「IT投資動向調査」によれば、調査対象の約38%が担当者一人以下。「ひとり情シス」どころかIT専任担当者がいない「ゼロ情シス」化がさらに進み、どちらも18.8%にまで増えています。また、約6割の情シス担当が、他の業務と兼任していることがわかりました。
Dell EMC 、約800社の中堅企業を対象にした「IT投資動向調査」の最新結果を発表 – Direct2Dell(2019年2月19日)
https://blog.dell.com/ja-jp/it-investment-trend-survey-2019/
- 中小企業で高い傾向
- 半数以上が兼任(IT部門ではない、人事や総務など管理系の場合も)
- 業務内容は、PC運用や管理、サーバ運用や管理、ネットワーク運用や管理など
- 年齢比率は50代が最も多く、退職・離職率も高い
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「ひとり情シス」のリスク
これまで説明してきた「ひとり情シス」の背景から、今後の課題についてポイントをいくつか説明します。
・緊急時でも一人で対応するしかない
どのような障害が発生しても、すべて一人で対応しなければなりません。インシデントへの対応や緊急対策、原因究明など、処理速度や対応できる量、正確性の点で限界があります。社内でも、協力できる体制がないことがあります。
・十分なスキルがあるとは限らない
他の業務と兼任している場合、日常業務の延長としてシステム運用する程度ならまだしも、緊急時に対応できるスキルやノウハウまで持っているとは限りません。
・オーバーワークなりがち
元々、情報システム部の業務自体が多様なため、少人数ですべての業務を担うことは不可能です。まして、他の業務と兼任している場合はなおさらです。
・相談できる相手がいない
社内でも、仕事上の疑問や悩みを相談できる相手がいないため、どうしても孤立しがちです。
「ひとり情シス」にならざるを得ない現状
問題があることを薄々わかっていながら、「ひとり情シス」状態を解消できない原因には、以下のようなことが考えられます。
・慢性的なIT人材不足
外部からの人材を確保できなければ、組織内で何とか回すしかありません。既存の人材の中から任せられそうな人を選び出すにしても、限られた人数のチームにするか、誰かに兼務してもらう以外、方法がありません。また、情報システムやシステム運用の専任ではない人が兼任している以上、十分なスキルを磨く余裕が生まれないためキャリアの向上もできず、人も集められません。
・一人で回せている現状
現状が組織内で「ひとり情シス」で回せている(ように見える)と、それで当たり前だと誤解されてしまいます。システム部門の業務範囲や作業量、掛かる時間がそれなりにあるとはいえ、業務の優先順位をつけ、担当者個人のノウハウやスキルを駆使して、何とか回せているうちはまだいいとして、オーバーワークは、何れ大きな問題へとつながります。
・経営者の認識不足
これが一番根深い問題かもしれません。中小企業の多くが、未だに情報システム業務を、付帯的で余分な業務だと考えているため、人やコストなどのリソースを掛けて十分な体制を作る意識に欠けています。それにも関わらず、「IT雑用係」としての業務まで押し付けられているケースも。
「ひとり情シス」は経営者の課題
IT人手不足は、業界だけの問題ではなく日本の企業全体の問題です。同様に、「ひとり情シス」は、組織全体の問題です。ビジネスに重要なシステムを、わずかな人員に負担を強いることで無理やり維持させ続けるのか、最適化された人材と効率化したサービスで無駄のないシステム運用を実現するのか。
マルチクラウド化がさらに進み、システム運用を自動化・最適化するサービスを導入すれば、ポジティブな意味で真の「ひとり情シス」「ゼロ情シス」が実現できるでしょう。
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