DXレポート「2025年の崖」に見る、運用へのインパクトとは?

新型コロナウイルスによる深刻な影響が続き、「ニューノーマル」が模索される中、DXは、企業にとってはリアルなサバイバルです。2019年のバズワードの一つとして、DXはシステム運用の現場に限らず、いろいろなところで話題になりました。しかし実態がないので、今ひとつピンと来ないのも事実。DXといっても、関係する範囲は、デジタル技術から企業変革まで非常に広いので、ここでは「2025年の崖」を中心に解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

経済産業省は「DX 推進指標」とそのガイダンス」 の中で、DXを次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
出典:「DX 推進指標」とそのガイダンス – 経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf

これはつまり、『デジタル活用によるイノベーションを通じて、絶えず新しいビジネスを創出していく、企業のあり方、変革』といえます。

この変革を起こして企業が生き残っていくには、さまざまな要素が必要です。実際に今、IoTやAIの活用が加速度的に進んでいますが、業種や規模、コロナ禍の影響に関係なく、DXに対応しなければ、企業が生き残れない時代になっていることは間違いありません。それを象徴するキーワードが「2025年の崖」です。

「2025年の崖」とは?

日本では、IT投資の実に80%がシステム運用・維持に費やされていますが、これは米国に比べて高い比率です。つまり、マーケットの新規開拓などDXを含めた「攻めのIT」には、残りの20%しか投資できていないというのが実態です。

さらに、システム運用・維持に関わる人材の不足が指摘されています。2019年時点で、IT人材人手が約17万人も不足しているのが、2025年には約45万人に達すると予想されています。さらに、各種レガシーなシステムのサポートが収束することも重なり、より深刻化することが懸念されています。結果として、DXなど攻めのIT投資が全くできなくなり、2030年までの5年間で12兆円もの損失を出すに至る、という衝撃的な警告です。2020年が、これをさらに加速させる可能性は十分考えられます。

出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(簡易版) – 経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf

一体なぜ、こんな事態になったのか?

こうなっている理由は、日本のIT業界に構造的な問題があるからです。システム運用や維持に関する投資では、ITベンダーやSIerに外注され、人材も顧客の外にいます。顧客にとっては、システムの中身はブラックボックスのまま、延々と運用・維持費用として流出し、ノウハウも内部には蓄積されません。

そのため、基幹システムがレガシーだとわかっている場合でも、なかなか大幅な刷新ができません。外注される側の人材が次々に入れ替わり、変更が繰り返されるごとに、システムが「スパゲッティー構造」になっていき、全体を理解できる人材が誰もいないまま、もはやアンタッチャブルなシステムとして、延々と運用維持費を費やしていく…という事態に陥ってしまいます。

実際、バックエンドはレガシー+フロントは新技術といったプロジェクトでは、レガシーなシステムを担当するCOBOLエンジニアが非常に重宝されることもあります。

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自社内に十分なIT人材がいない組織をどうするか?

一方、欧米では、システム運用に関する人材は、ユーザの情報システム部門が抱えています。外部のITベンダーやSIerに発注する比率が非常に低いので、ブラックボックス化もしません。ユーザ自身がレガシーシステムの運用・維持に関わる部分も、必要に応じて自分たちで変えていくことができます。

DXを実行する上で非常に重要なことは、自社内にIT人材を確保している組織体制です。バックエンド(勤怠や会計など管理系)から、フロントエンド(販売や商品管理などの本業)のシステムに至るまで、内部に幅広い人材がいれば、当然DXには有利です。しかし、現実にはリソースの確保が難しいとなれば、今いる人材で効率化を目指すしかありません。

システム運用の現場がDXに備えるには?

経済産業省のレポートでは、『レガシー vs デジタル』のような対立の構造になっていますが、実際の現場では、両者の共存がしばらくは続くはずです。特に、中堅マーケットでは、その傾向が強いことが想定されます。

では、システム運用のエンジニアとしては、これらの動きをどう捉えればいいでしょうか?DXを進める企業は、外部の組織に頼らず、自社でIT人材を確保して自社で解決していく道を歩んでいくでしょう。実際に、システム部門を社内に設置し、ITエンジニアを増強している企業はますます増えています。先進的な企業では、既存のシステムを効率化できるように、自社用に作り替えているところもあります。

新型コロナウイルスの長引く影響、雇用の流動化、ビジネスの高速化、クラウドサービスの充実など、システムとビジネスを取り巻く環境は様変わりしました。デジタルイノベーションによる企業の生き残りは、「2025年の崖」を待たずに、前倒しせざるを得ないでしょう。ユーザに高い付加価値を提供するには、統合型のシステム運用サービスを導入し、可能な限り効率化・自動化する必要があります。また、組織だけでなくシステム運用エンジニアも、さらにスキルを磨きより幅広い視野を身につけることで、変化の時代に対応することが重要です。

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