2020年の新型コロナウイルス流行後、多くの業界でテレワークが本格的に導入され、働き方の多様化が一気に進みました。
システムの運用保守を担うエンジニアも例外ではなく、自社のオフィスや取引先だけでなく、外出先や自宅、海外など、さまざまな拠点での運用・保守業務に対応する必要があります。多拠点での運用は対面での対応が難しくなるため、ITツールを活用することが重要です。そこでこの記事では、多様化・多拠点化するシステム運用・保守業務の注意点について考えてみます。

働き方の多様化によって多拠点での運用・保守業務が増加

内閣府の「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると2022年6月時点の全国のテレワーク実施率は30.6%でした。これは、コロナ禍以前の2019年12月の10.3%の約3倍で、コロナ禍に入ってからテレワークが一気に進み、働き方が多様化したことがわかります。

出典:「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result5_covid.pdf

元々、デバイスやサービス、ネットワーク、人材などが揃っていたIT業界のテレワーク実施率は、約65%と高い数値を示していました。運用・保守業務を担う多くのエンジニアも、テレワークに移行していることが予想されます。
一方で、一部の企業ではテレワークの頻度を減らし、出社に回帰している企業や、テレワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークを推進している企業もあり、働き方がさらに多様化しているのが現状です。
そのような背景の中、運用・保守業務もワークプレイスの多様化に伴い、以下のような課題が浮き彫りになりました。さまざまな環境でも安定して業務を遂行するには、これらを解決することが重要です。

  • コミュニケーション不足
  • 情報漏えいリスク
  • 業務品質の担保

円滑なコミュニケーションを実現するためのITサービス

テレワークの普及により、ビデオ会議はIT業界以外にも広く導入されました。セミナーやイベントもオンラインにシフトしたことで、一般の人が使う機会も増えました。また、チャットは元々、一般の人々のコミュニケーションで日常的に広く使われていたこともあり、ビジネスツールとして導入するハードルも低くなった面はあるでしょう。

ビデオ会議サービス

メンバーの顔を見ながら会話したり、画面や資料を共有しながら協議するには、ビデオ会議(Web会議/テレカンファレンス)サービスが有効です。テキストでは伝え辛いニュアンスを共有しながら運用保守業務を進められるだけでなく、メンバーの表情や様子から体調やメンタル面の状態を把握することもできます。
代表的なツールとして、Microsoft TeamsやSlack、Zoom、Google Meetなどが挙げられます。

ビジネスチャットサービス

チャットサービスを使えば、テキストベースで円滑にコミュニケーションを取ることができます。メールと違って、リアルタイムに近い気軽なやり取りがメリットです。
SlackやMicrosoft Teams、Chatworkなどが代表的なツールです。プロジェクト管理サービスの機能の一部として提供されていることもあります。

ただし、これらのサービスは環境によって使えるかどうかの条件が異なります。効果的な使い方やルールが整備される以前に、なし崩し的に導入されてしまった面もあり、情シス担当者としては悩ましいところです。
また、一部の大手企業では出社に回帰しているように、対面でリアルタイムほどのコミュニケーションは実現できていません。やり取りできる情報はごく一部に過ぎないことは、常に注意しておきましょう。

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オフィス外からアクセスする際のセキュリティ対策は必須

オフィス外から社内サーバにアクセスする際には、セキュリティ対策を講じることが重要です。テレワークでは、外部のインターネットを経由するため、情報漏えいやウイルス感染などのリスクが高まります。一つの対策としては、特定のパソコンからのみアクセス可能なVPN(Virtual Private Network)を利用したネットワーク接続が知られています。
ただし、VPNを利用するとネットワークが遅くて仕事にならなかったり、古いハードウェアに脆弱性があってむしろリスクが増す事態も起きます。メンバーの接続形態やデバイス、数、プロファイルなど、ネットワークやソフトウェアの導入・設定を見直しましょう。

複数人で操作チェックしながら運用できる仕組みを導入

システムのリリースなど特にミスが許されない作業は、2名以上の体制で操作することが一般的です。オンサイトであれば、1つの端末の前に座って同じ画面を見ながら確認して作業できます。しかし、リモートだとそういったことができません。そのような場合、作業手順やチェックリストを用いた業務の見直しや、作業ログを取得できる踏み台システムを使うことで、リスクを軽減することが出来ます。
踏み台システムでは、作業目的や申請に応じたアクセス先の制御や、実行コマンドの制限が出来るケースもあります。仮に遠隔操作での保守・運用作業で何らかの問題が生じてしまった場合でも、作業がログとして記録されるため、どこが問題だったのかを後で検証するのにも使えます。
導入費用やランニングコストの兼ね合いなどで踏み台システムの導入が難しい場合は、先ほど紹介したリモート会議システムで代用する手もあります。一人が社内サーバにアクセスし、その画面を共有しながら作業を進めることも可能です。これももちろん、使えるかどうかは条件の中で判断が必須です。

ワークプレイスや働き方の変化に伴って仕組みを見直そう

ワークプレイスの多拠点化や働き方の多様化は、さらに加速する傾向にあります。リモートワークやフレックスタイム、オフショアなどに限らず、メンバーシップ型からジョブ型への雇用のシフトなど、労働環境自体が大きく変化しています。AIがシステム運用に導入されるのも、実は想像以上に早いのかもしれません。
システム運用・保守を担うエンジニアは、システムと人の両方に注目しながら、適切なサービスやツールを選んで変化に対応していきましょう。効率的なサービスを安定して維持することは、人が働きやすいコミュニケーション環境を維持することと相互に作用するはずです。

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