【Special】認知向上で増えたZabbixの「指名買い」― Zabbix Japan LLC 寺島さま インタビュー(1)

2020年11月13日(金)と14日(土)の2日間に渡って、「Zabbix Conference Japan 2020 」が開催されました。
新型コロナウイルスの感染拡大予防で、今年はいろいろなイベントが中止されたり、開催されても無観客や、規模を縮小せざるを得なくなりました。今年で8回目を迎えた同カンファレンスも、初の会場+オンライン型式で開催されましたが、それなりにメリットもあったようです。
ZabbixオフィシャルパートナーであるIIJの福原が、Zabbix Japanの寺島さんにイベント終了後にリモートで取材した内容を、3回の連載でお届けします。

お話:Zabbix Japan LLC
代表 寺島 広大さま

 聞き手:IIJ 福原

プラス材料もあった会場+オンライン開催

IIJ 福原(以下、福原):今年のカンファレンスは、会場+オンラインという構成でした。私も、残念ながら現地へお邪魔することができず、会場の様子はリモートで覗かせてもらいました。いろいろな制約があったり、準備も大変だったんじゃないですか?

例年とは異なる、カンファレンスの様子(撮影:Zabbix Japan)

Zabbix 寺島さま(以下、寺島):そうですね。今回は検温や空気の入れ換え、清掃チェックなど、今まで必要なかった作業だとか、受付や物販の方法も変えたりと、従来とは違ったやり方が必要でした。ちょうど、東京都内で感染の再拡大が心配されていた時期だったこともありますし、今年は仕方ないですね。

福原:去年は、会場にいらっしゃったCEOのアレクセイさんにもお話しを伺うことができました。今年は、ラトビアの本社から誰も来られなかったのも、残念でした。会場の参加者が少なかったのも、やはり、ちょっと寂しかったですかね。

日本でのビジネスの現状とZabbix 5.0への展望 – Zabbix社CEO アレクセイ・ウラジシェフさまインタビュー | 運用ナビ
https://un4navi.com/interview/19074/

寺島:そうですね。今年は、本国の「Zabbix Summit 2020」も完全にオンラインでした。例年だと、アレクセイや本社のスタッフもカンファレンスに合わせて来日し、懇親会で来場者と談笑したり、抽選会でも盛り上がるんです。今年は日本の登壇者も、リモート出演や録画だったりで、どうしてもリアルやライブ感という点では、物足りない感じはありました。いつもは300人近くの方がいらっしゃいますが、今年は100人程度。間隔を開けるのは必要な措置だったとはいえ、ちょっと寂しい雰囲気でしたね。

福原:一方、オンラインの方はいかがでしたか?

寺島:今回は初めて2日間に分けて開催しましたが、両日とも、ライブで500名弱の方に視聴していただいていたようです。新規の方が大幅に増えたということはないようですが、普段はなかなか参加しづらいという方にも視聴いただいたようです。

福原:なるほど、マイナスばかりでもなかった、と。

寺島:はい。仕事の合間やアーカイブでも、いろいろな皆さんに見ていただいたようです。また、質疑応答やアンケートのサービスも併用したところ、普段はなかなかご質問もないんですが、今年は会場とオンラインそれぞれからいくつか寄せられたので、そこはよかったところです。
ただ、情報共有だけならオンラインでもいいとはいえ、いつもだと、皆さんの顔が見えて熱気や反応もリアルに分かるんですが、それがないのはやはり残念でしたね。今後の感染状況などにも依りますが、来年は、より会場に足を運んでいただきやすい対策や、オンラインの仕組みなりを考える必要があるでしょう。
当日の詳しい様子は、フォトレポートやまとめ記事も公開しているので、そちらもご覧いただければと思います。

Zabbix Conference Japan 2020 レポート
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2020_report

Zabbix Conference Japan 2020 フォトギャラリー
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2020#conference_gallery

リアルな接点から、オンラインへのシフトも

福原:ところで、今回のカンファレンスに限らず、御社のビジネスとして、今年の新型コロナウイルスの影響はどの程度ありましたか?問い合わせやサポートが増えたような変化は、あったんでしょうか?

寺島:これまでのところ、特に大きな影響は出てないですね。前年と比較して、特に落ち込むとか、逆に伸びるとか、大幅な変化はみられません。元々、Zabbixは、弊社がお客さまのところへ売り込みに行くような販売スタイルではないので、マーケットの動きを十分に掴み切れていない面もありますが。
ただ、パートナーさん数社とお話ししたところ、『客先に直接足を運べなくなった分、オンラインの比重は上がった』とは聞いています。Webサイトの改善やリモートの活用など、パートナー各社で独自の対応や工夫もあったからでしょう。

福原:弊社も確かに、新型コロナウイルスの影響だけなのかどうかははっきりしませんが、オンラインでのサービスへの問い合わせが、若干増えた印象はあります。
御社とのパートナーシップで、11月には「IIJ統合運用管理サービス(UOM) マネージドモニタリング for Zabbix」というサービスもリリースしました。今までは、こちらから営業担当者が直接先方へ出向いていましたが、Webサイト経由の問い合わせや、お客さまからのお声掛けで商談に発展するケースは増えています。エンタープライズ向けであっても、お客さまの方からのアクションという外部からの自然流入がきっかけとなるように、方向性がちょっと変わってきつつあるのは感じます。

なぜ大規模システム向け「マネージドモニタリング for Zabbix」なのか― IIJだからできる!エンタープライズ向け総合ソリューション | IIJ Engineers Blog
https://eng-blog.iij.ad.jp/archives/6780

認知アップと共に増えている「指名買い」

福原:御社が、ビジネス的に大きなマイナスがなかったということで、Zabbixパートナーとしての弊社もホッと一安心です(笑)。実は年々、お客さまからZabbixを「指名買い」されることが増えているんです。弊社では、サービスの一部として、他社の監視サービスも扱っていますが、以前は、お客さまから単純に『効率的に監視できませんか?』というご要望が多かったのが、近年では『Zabbixで監視したいんですけど?』とご相談いただくことが増えました。

寺島:ありがたいことです。カンファレンスでも少しお話しましたが、2019年のとある外部レポートでは、18%以上の企業にご利用いただいているようです。

福原:これは、システム運用の仕方が変わってきたということではなく、シンプルにZabbixという監視ツールの認知が急速に進んだ結果だと思います。Zabbix本社での開発のスピードや、パートナー企業との信頼できるアライアンス、ユーザニーズへの適切な反応、そして先日のカンファレンスや定期的なセミナーなど、認知拡大の活動が功を奏しているからでしょう。また、カンファレンスでは、御社の丸山 恵一さんのセッション「Zabbixビジネスの成長を共に歩むパートナーとの活動」でお話されていた中で、『日本のサポートは好評だ』という話もありました。日本の企業に対して、きちんとサービスを提供するパートナー各社の体制ができているからでしょう。そういう背景もあって、ユーザさんの期待値は年々上がっている気がします。

寺島:そうですね。私たちはお客さんからの反応を直接聞いているわけではないんですが、リサーチ企業に依頼して調査したところ、嬉しいことに評価は高いようです。弊社としては、『ここまではサポートの対象だが、それを越えると対象外だ』といった仕分けはせず、お問い合わせをいただいたものに対しては、できる限り対応する姿勢で臨んでいます。苦労する面もありますが、お客さまの課題解決への態度を評価いただいているのであれば、本当にありがたいことです。

気軽に試して使い始められるメリット

福原:実はこの「運用ナビ」では今年、システム監視や運用、保守への関心が高まっていました。この理由は、自宅待機とテレワークが急速に拡大したことで、今までやったことがないシステム運用の仕事に回されたり、業務でカバーしなければならない範囲が増えたり、今までZabbixを十分に使っていなかったエンジニアでも、触る必要に迫られた人が多かったからのように考えています。寺島さん相手に、初歩の話題は本当に恐縮なんですが、改めてZabbixのメリットなど概要について、「運用ナビ」の読者に簡単にご紹介いただけますか?

豊富な監視対象(出典:Zabbix Japan)

寺島:はい。Zabbixは、オープンソースソフトウェア(OSS)の、統合監視ソフトウェアです。サーバやネットワーク機器を監視してデータを収集、障害を検知して、それを通知したり、グラフとして表示できます。マルチプラットフォームに対応しているので、複数のOSが混在している環境でも導入できます。機能拡張や連携もできるので、小規模なシステムから、エンタープライズ規模のシステムまで、柔軟に対応しています。来年2021年4月には、最初のリリースから20周年を迎えます。

福原:日本の組織は、サービス導入に際しての予算や実績、サポートなど、稟議書や手続きが煩雑で面倒ですよね?また、システムに疎い経営者の方だと、無料のソフトウェアへの懐疑心や、セキュリティー、サポート面で不安を感じる人もいると思いますが、その辺りはいかがでしょうか?

寺島:Zabbixは、ラトビア本社の開発チームが責任を持って開発しているため、有償製品と同じクオリティーです。開発体制も十分整っていて、継続的かつ定期的に新バージョンがリリースされています。また、オープンソースソフトウェアとしてのメリットの一つが透明性です。脆弱性に対しても迅速に対応しているので、日本の企業の皆さんにも、安心してご利用いただけるサービスです。無料なので手軽に試せるのも、予算確保に苦労する現場でも試しやすいのはメリットです。また、プリセールスについてもお気軽にご相談いただけます。Zabbixの導入を躊躇したり、監視を含むシステム運用でお悩み事がある場合も、御社のようなパートナー企業をご紹介して、柔軟に対応いただくことが可能です。

福原:システム運用や監視の現場経験が浅いエンジニアでも、極端にいえば経験がなくても、そして予算が厳しい現場でも、いきなりZabbixを使い始めること自体はできますからね。

寺島:そうですね。Zabbixには、基本的な設定テンプレートやプラグインがあるので、とりあえず最低限の監視は可能です。超大規模や複雑なシステムでなければ、簡単にインストールしてすぐに使えます。
また、コミュニティーが充実しているのも特徴です。フォーラムでユーザ同志の質問や回答も活発ですし、生きた情報リソースとして活用いただけます。Webセミナーも開催しているので、まず導入してみた上で、中を見ながら少しずつ理解を進めていくこともできるでしょう。

Zabbix Webセミナー
https://www.zabbix.com/jp/webinars

気軽に試せる、オープンソースソフトウェアとしてのZabbix。しかし、肝心なのは、監視のその先です。次回は、その辺りの話へと続きます。
【連載:第2回】
【Special】属人化の回避とスキルアップは両立可能か? ― Zabbix Japan LLC 寺島さま インタビュー(2)

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