【Special】監視を入口にした新たな付加価値の提供 ― Zabbix Japan LLC 寺島さま インタビュー(3)

Zabbixは、システム監視の強力かつ柔軟なソリューションであることは間違いありません。しかし、監視にしか、それもIT系のハードウェアやネットワークにしか使えないと思い込んでいると、今後のトレンドを見誤るかもしれません。実は、膨大な過去のデータから未来の障害を予測したり、回避する機能も期待されているのです。「Zabbix Conference Japan 2020」を終えたZabbix Japanの寺島さんに、オフィシャルパートナーであるIIJの福原がお話を伺いました。3回の連載でお届けする、その最終回です。

前回まではこちら。
【Special】属人化の回避とスキルアップは両立可能か? ― Zabbix Japan LLC 寺島さま インタビュー(2)

お話:Zabbix Japan LLC 代表 寺島 広大さま

 聞き手:IIJ 福原

古いシステムを適切にアップグレードしていく重要性

IIJ 福原(以下、福原):日本の企業は、古いシステムをなかなか変えられない現状がありますよね。実は、弊社も他人事ではないんですが…(笑)。お客さまでも、未だにZabbix 2.Xを使っている会社もあって、『バージョンアップしませんか?』と進言することもしばしば。新しい環境への移行については、どんなアドバイスが可能でしょうか?

Zabbix 寺島さま(以下、寺島):よくある話ですね。Zabbixは、ハードウェアの新旧にはそれほど大きな影響を受けません。一方、ソフトウェアだと、古いOSのサポートについてのご相談などもいただき、できるだけ対応していますが、環境が古くなればなるほど、情報や手段が限定されてしまいます。最悪、余計な時間ばかり掛かって、結局、解決できないという事態も。

福原:昨今のビジネスの現場は、いろんなシステムで多様化・複雑化しています。例えば、オンプレミスだけの環境をクラウドに対応させるとか、マルチクラウド化したり、アプリケーションを作り直したり。結局、いつかは新しくせざるを得ないですからね。

寺島:そうなんです。アップデートの課題は、整合性や動作環境の制限などもあるでしょう。ただ、古いバージョンは、バグがあっても修正されないので、環境の変化に合わせた適度なアップグレードは不可欠です。新しいバージョンには機能も増え、手間が掛かっていたことがシンプルに処理できるようにもなっています。
Zabbixのメリットは、無料でテストできること。魅力的な機能がサポートされた時点で、御社のようなパートナーにご相談いただくのがいいでしょう。

福原:その辺りのメリット・デメリットをきちんと考えていけば、スムーズな移行が可能でしょう。

6.0 LTSへのロードマップと、新しい機能への期待

福原:ところで昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)が盛んに叫ばれ、ともするとマーケティングや営業用の宣伝文句のように使われています。例えばDX目線で見たZabbixというと、どんな提案が可能でしょうか?

寺島:…掴みどころがないですよね、DXって(笑)。ただ、Zabbixが単なるIT化のためのツールではなく、ビジネスのやり方そのものを変える可能性を持っているという意味では、DX向きかもしれません。
例えば、Zabbixは監視用ソフトウェアですが、数値や文字列をグラフ化するような、可視化と解析にも使えます。Webサイトへの訪問者の数や、マーケティングや営業上の数字を視覚的に表示したり。また、接続する機器も、ネットワークやサーバだけでなく、温度などのセンサーや工場の製造ラインで使われている業務用機器などにも対応し、幅広い障害検知に利用できます。
ここ数バージョンは、データ取り込んで解析できる機能をさらに強化しています。元々、Zabbixユーザは、工夫して使うことが多いんですが、それに応える機能を充実させています。

福原:そういえば、今年5月のZabbix 5.0、その後の5.2と、リリースは順調に進んでいるようですね。YouTubeでも『周期がしっかりしてきた』というコメントが(笑)。

寺島:はい。今までは、開発スピードがやや遅れ気味でしたが、体制やプロセスを増強し、近年はスムーズにリリースできています。日本支社もキャッチアップしていくのは、結構、大変で(笑)。
Zabbixには、リリースポリシーという開発スケジュールがあります。6ヵ月ごとのペースでメジャーバージョンをリリースし、そのうち3回に1回、つまり1年半ごとに、LTS(長期サポート)バージョンをリリースしています。2020年12月時点のLTSは、5.0です。LTSの間のアップデートはポイントリリースと呼ばれ、現在5.2です。
機能面では、パブリッククラウドの監視とZabbixサーバの構築や、IoT機器からのデータ収集や監視、分散したリモート環境を統合監視するのに効率的なプロキシなど、いろいろな機能をサポートしてきました。

福原:やはり、ユーザが多いのは4.0なんでしょうか?

寺島:そうですね。今年ご参加いただいた皆さんだと、5.0ユーザがすでに20%近くいらっしゃいましたが、一番多いのは4.0です。もし、今からZabbixを導入してみようと思われるのなら、最新バージョン5.2.Xではなく、ある程度のサポート期間が確保されている5.0を選ぶのもいいかもしれません。

福原:今後の開発予定は、アレクセイさんのセッション「Zabbix 6.0 LTSへ向けたロードマップ」として示されていました。

ロードマップを紹介するA.ウラジシェフCEO(提供:Zabbix Japan)

寺島:はい。5.4から6.0でも引き続き、監視と通知の拡張や連携はさらに続けていきます。多量のイベントの相関関係を示すタグの強化や、クラウド監視機能の強化、高い可用性とパフォーマンスなど、詳しくはWebサイトをご覧ください。

Zabbix ロードマップ
https://www.zabbix.com/jp/roadmap

Zabbixは、単なる監視のさらにその先へ

福原:いろいろな機能が予定されている中で、インサイトからAIと企画学習でデータ分析するベースラインモニタリングというのは、非常に魅力的ですね。

寺島:これは、5.2でサポートした、収集済みトレンドデータの計算処理ができるトリガー関数をさらに拡張した機能です。今は、例えば『CPUの使用率が90%を越えたらアラートを出す』といった、単純なしきい値を設定して処理していますよね。これを『いつもと違う状態』のような柔軟な設定で監視して、過去と現状と比較・分析し、障害として検知する経過予測機能です。

福原:確かに、過去のデータから将来を予測して、システムを安定して運用させる機能は、今後、必須でしょう。となると、どれだけログを取得しても運用コストに反映されない点は、Zabbixの大きなアドバンテージになりそうです。
ユーザとしては『監視対象は増やしたいが、ノードが増えるとその分、課金が発生するなら止めておこうか…』と躊躇するのは当然ですし。それがZabbixだと、取れるデータはとにかくすべて取っておける。それを分析して、より高い確度で予測するというのは、大きな強みになると期待しています。

寺島:おっしゃるとおりです。データを沢山溜めてもコストは増えないので、取りあえず取得した後で、どう分析するか考えるということもできます。

福原:もちろん、無駄に溜めても仕方ないので、目的や使い方にもよりますが、予測分析できるようになると、エンジニアの負担は軽減されるかもしれません。

寺島:そうなればいいですね。設定もシンプルにして、余計な障害検知を減らすなど、皆さんに使っていただきながら、改善していく予定です。

福原:また、レポート作成と可視化の機能も魅力的だと感じました。定期スケジュールを設定しておけば、自動生成されたPDFレポートが送信されてくるわけですから、ニーズは多いと思います。実際、弊社は企業から業務をアウトソースされることが多いので、レポートのような事務的な作業は、システム側で自動的に処理してくれると楽です。

寺島:これは以前から、世界各地で要望が多かった機能の一つです。日本だと、月次や四半期レポートなどの報告業務で、必要なユーザは多いでしょうね。

福原:Zabbixが、単なるデータ収集ではなく、そこから得られた結果で将来の傾向を分析し、それが自動的にレポートまでできるようになると、ユーザメリットとしては大きいと思います。期待しておきます。

ビギナーからスキルを持つ人まで、幅広いサポートのために

寺島:福原さんには最初の方でも言及していただきましたが、Zabbixを使っていただくユーザの層が、広がってきた印象はあります。以前は、スキルがあるエンジニアが自分からZabbixを選び、ガリガリ使い込むスタイルでした。それが最近は『Zabbixがいいらしい』と聞いた人が増えているようです。これら新規ユーザをどうやって支援していくのかが、ここ数年のテーマです。

福原:ユーザのニーズをきちんと把握していかないと、十分なサポートができませんからね。

寺島:そうなんです。毎年のアンケートで、「運用担当者のスキルや属人化」は常に困り事のトップです。新規ユーザ向けのサポートや基礎トレーニングだけでなく、より実務レベルのサポートも求められています。パートナー各社ともお話を進めていますが、来年はサポートサービスの中味を見直しながら、Zabbixをビジネスに活かす知見をより深めていただくように、発展させたいと思っています。

福原:新規ユーザ向けの、基礎情報の充実も必要。その一方、さらに使っていただくためのソリューションとしては、監視だけでなく、システム運用全体の提案も求められる、と。サポートの幅も広げる必要がありそうですね。

寺島:はい。Zabbixを開発しているのは本社で、日本支社の担当は大きく4つ、公式サポートと認定トレーニング、アプライアンス製品の提供、そしてパートナー各社とのアライアンスです。
このうち、サポートの比重が大きいですね。ユーザ企業は、担当する人によってZabbixのスキルレベルが大きく違います。そのため、基本情報の提供や基礎トレーニングなど、Zabbixを導入いただく下地作りに注力しています。
一方、システム構築やコンサルティングなどは、パートナー各社にお願いしています。ユーザがZabbixを導入し、システム構築から保守、運用と、スピーディかつ安定して使うには、正しくかつ豊富な知識があるプロの存在が不可欠です。

福原:今年は、テレワークにシフトせざるを得なかった年でした。ただ、例えば『インターネット経由で、システムをどのようにセキュアに使うか?』という、新たな課題に直面した企業もあります。『VPNが必須なのは十分承知しているが、いざ自宅から接続すると遅すぎて仕事ができず、結局、通勤せざるを得ない』とか。
これが例えば、弊社の「マネージドモニタリング for Zabbix」だと、UOM(統合運用管理サービス)を経由してZabbixへ接続するため、必ずしもVPNを設定していただかなくても、セキュアかつ安定して使えます。
Zabbixオフィシャルパートナーの弊社としては、お客さま各社に安心かつ快適にZabbixをお使いいただくのはもちろん、周辺の付加価値まで含めたトータルソリューションを提供することで、御社と一緒に成長していけるように活動を続けます。

寺島:引き続きよろしくお願いします。

福原:ありがとうございました。

なぜ大規模システム向け「マネージドモニタリング for Zabbix」なのか― IIJだからできる!エンタープライズ向け総合ソリューション | IIJ Engineers Blog
https://eng-blog.iij.ad.jp/archives/6780

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