監視のさらにその先を目指す、データ収集ゲートウェイの可能性 – NTTコム ソリューションズ 田中さま・福島さまインタビュー

監視のさらにその先を目指す、データ収集ゲートウェイの可能性 - NTTコム ソリューションズ 田中さま・福島さまインタビュー

Zabbixを、システム監視のためだけでなく、データを収集し分析するための「データ収集ゲートウェイ」。このサービスを企画・開発している、NTTコム ソリューションズの田中さん・福島さんにお話を伺いました。さまざまな業界・業種の現場で使える汎用性を持ち、集めたデータをビジネスにどう活かすか?に集中できる、次世代のフレームワークとは?

NTTコム ソリューションズ(株)
マネジメントソリューション本部 プラットフォームソリューション部 田中 武信さま

同社
マネジメントソリューション本部 プラットフォームソリューション部 福島 崇さま

 

システム監視以上の役割を果たせる「データ収集ゲートウェイ」

監視のさらにその先を目指す、データ収集ゲートウェイの可能性 - NTTコム ソリューションズ 田中さま・福島さまインタビュー

田中さん(左)と福島さん(中)にアタックする、IIJの福原(右)。

IIJ 福原 (以下、福原):Zabbixのマップ機能を使った「マップコンテスト」では、福島さんが応募した『パネルクイズ アタック25』は力作でしたね!テレビ番組のあのパネルの様子をそのまま、わざわざZabbixを使って再現するという(笑)。流石は、Zabbix認定トレーナー!

NTTコム ソリューションズ 福島(以下、福島):『応募作品が少ないから、出してくれ!』っていわれて、時間がない中の力業で作ったんですが、本当は『アタックチャ~ンス!』ってSEも入れたかったんですけど(笑)。

福原:いや、流石ですよ!Zabbix社のCEOアレクセイさんも『福島さんのプレゼンは、いつもユニークだ』って褒めてたじゃないですか(笑)。
それでは早速、まずは田中さんへのアタックから。今日のアジェンダで紹介されていた「データ収集ゲートウェイ」というのは、具体的にどのような製品ですか?

NTTコム ソリューションズ 田中(以下、田中):Zabbixを、監視よりもさらに広い範囲で使っていくことを目的としたソリューションです。今はまだ、本格的なビジネス展開の前段階ですが、一般的なシステム環境だけでなく、厳しい環境でもお使いいただける製品を目指しています。

Zabbixの可能性を広げる! ~データ収集ゲートウェイの事例紹介~ | Zabbix Conference Japan 2019
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2019_agenda#day1_1110

福原:その「厳しい環境」というのを、もう少し具体的にいうと?

田中:一般的なデータセンター常設の環境ではなく、例えばイベント会場のような、暫定的にその場に設置して期限がきたら撤収するとか、機材が移動するような環境です。当然、耐久性や可搬性も要求されます。

福原:なるほど。一般的なシステムだと、5年ぐらいのライフサイクルがありますが、一時的な環境でもシステム監視は必須ですからね。

田中:はい。しかもデータ収集ゲートウェイはシステム監視だけではなく、さまざまな情報を集めることを目的としています。例えば、イベント会場の環境情報を集めたり、人が集まっている密度を計ったりする使い方も考えられます。

Zabbixが対応していない種類のデータを収集できるフレームワーク

監視のさらにその先を目指す、データ収集ゲートウェイの可能性 - NTTコム ソリューションズ 田中さま・福島さまインタビュー

Zabbixを拡張して、データを「渡す」「溜める」「集める」仕組みについての、田中さんのプレゼン。

福原:どのようなデータに対応しているんでしょうか?

田中:基本的には、Zabbixに格納できる形であれば、どんなデータでも対応できます。データ収集ゲートウェイは、Zabbixだけでは対応できない種類のデータでも収集可能な、フレームワークを目的としています。

福原:なるほど。一般的な流れだと、Zabbixは監視のためのツールなので、Pingやポート、ログを見て、もし何か障害が起きていれば必要な対応を取る、というフローですよね。しかし、御社のデータ収集ゲートウェイは、それとはちょっと違う考え方だ、と。

田中:そうです。単なるシステム監視以上の使い方をするためのサービスです。今日の、Zabbix社のCEOアレクセイさんのオープニングスピーチでも、『Zabbixを、単なる監視だけのサービスとしてではなく、情報を扱うフレームワークやプラットフォームとして提供していく』というお話がありましたが、これは弊社が目指す方向と同じです。

福原:そのようですね。御社の提案も、データ収集基盤なんですね。先ほど、「厳しい環境」という話がありましたが、他にはどういう使われ方をイメージしていますか?

田中:ICT関連の業界ではなく、ICTを使ってビジネスをしている業界に有効だと思っています。例えば、通信やメディアだと、IT機材を車に載せて移動させるようなこともあるでしょうし、物流だと輸送機関の追跡などもできます。そういった、汎用的な使われ方を想定しています。

データを集めたり溜めることを気にせず、『どう使うか』に集中できる強み

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Zabbixを、システム監視に留まらない用途にも積極的に使っていく。

福原:しかし、データ収集するなら、例えばElasticとかいっぱいありますよね。一般的には、そういうツールを使ってデータ収集するところを、わざわざシステム監視であるZabbixをベースにしたのは、やはり御社が培ってきた強みを活かした、ということなんですか?

福島:もちろんそれもありますし、集めてきた環境データとシステム監視の間の関係性まで考えるとなると、Zabbixの方が柔軟に使いやすいというのがあります。先ほど田中が出した例のように、イベントで人が集まっている密度が高くなると、Wi-Fiがつながりにくくなって障害が起き、来場者の満足が下がってしまうような関係性が見いだせます。そうなるとその対策として、今までのITの範囲に留まらない、新たな付加価値が生まれてくるんです。そのため、監視から分析まで全体を考えると、Zabbixの方がやりやすいんです。
確かに、システム監視用ツールはいろいろありますが、監視だけしかできないとユーザに使ってもらえません。『いろいろなデータを収集して、同じ基盤で比較分析できる』というところまで発展させていかないと、この先、Zabbixを選ぶ理由がなくなってしまいます。

福原:確かに。一般的には別だと思われている数値が、実は、密接に関係しているということが、システム的に把握できると便利ですね。

福島:ビッグデータでもそういう考えですよね。一見、関係ないデータの中から、相関を見つける。Zabbixが今まで監視していたデータと、センサーなどを使って新しく把握したデータの間に相関があれば、ワンランク上の高度な監視ができます。また、システム監視だけでなく、情報が収集できれば、さらに別のサービスも提供できるようになります。

福原:Zabbixをデータ収集に使う手法は、初めて聞いたときにとても面白いと思いました。ただ、いろんなデータを収集するのって、デバイスやインタフェースが、バラバラだったりして難しくないですか?そこは、どう取り組まれていますか?

田中:おっしゃるとおりです。このデータ収集ゲートウェイを企画した段階で、国内のセンサー関連の現状を調べたんですが、工場系なら工場系といったように、技術やデバイスが蛸壺化しているんです。専用品なので、単価も高いんですね。
そこで、汎用的に使えるデータ収集手段としてZabbixを提供することで、情報を集めて溜める仕組みを、コストを抑えつつ簡単に構築できると考えています。また、Zabbixにデータを取り込むことで、専用品ではバラバラだったデータフォーマットを、Zabbixのヒストリフォーマットに統一できます。

福原:来たデータをZabbixに集めるか、こっちから取りにいくと。フォーマットがバラバラだった情報を、Zabbixが扱える形に均一化できるわけですね。

田中:はい。今日のアジェンダで説明した、データを「渡す」「溜める」「集める」ですね。来たデータを集めるか、取りにいくかは、適した方法ならどちらでも構いません。柔軟なオープンソースとしてのZabbixの強みがあるので、個々のデバイスやインタフェース、収集する手段が違っても、Zabbixに取り込まれた時点でデータの形式が均一化されます。
つまり、『どう集めて、どう溜めるか』を考える必要はなく、『どう使うか』だけに集中できるんです。ただし、分析などすべてをZabbixだけで完結させる必要はないので、使いやすい形に処理して、次のサービスへと渡せる形で格納する。今日の発表内容は、このための「集める」手段なので、「データ収集ゲートウェイ」と呼んでいます。

福原:今日、発表があったZabbix 5.0の拡張性も相まって、さらに可能性が広がりそうですね。

単なるITではなく、ユーザへのソリューション提案としてのICT

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単なるITではなく、各産業固有の部分に関わっていくICTを目指して。

福原:システム監視の業界からすると、新しい分野にチャレンジしていく姿勢を感じます。データ収集ゲートウェイを、この先、どう展開させていこうと考えていますか?

田中:まずは、いろんなシチュエーションで使ってみることを計画しています。元々、データは目的があって集めるので、業界や地域によってもニーズが違うはずです。なので、データを集める仕組みづくりを進めています。

福原:しかし、データを収集し続けると、データベースが肥大化していくことになりますよね?何か、キャパシティプランのようなものはありますか?

田中:事前に需要を予測して、キャパシティプランを立てること自体、難しいでしょうね。必然的に、データを溜める先は、オンライン状態でも自動的にスケールアップできるクラウドになると思います。

福原:なるほど。個人的には、Zabbixは、より大規模なエンタープライズ向けにシフトしていくと感じています。大規模なデータをどう集めて使うかという点でも、やはり進んでいる方向としては御社と同じですね。

田中:はい。世の中では、データをスケールアウトして並列化するという動きもありますが、実は、並列化というのは難しいんです。それに対してZabbixは、単独で大きなデータを扱える構造で開発されています。我々も、そのメリットを活用できています。

福原:今後の実用化や商品化に向けて、苦労している点などはありますか?

田中:今は、特定の用途向けにチューニングしている段階です。今後、ノウハウがある程度溜まっていけば、その平均値を取って、いろいろな業界向けに汎用化できると思います。単なるIT(情報技術)の範囲を越えて、各産業固有の部分に関わっていくICT(情報通信技術)を対象として考えています。

福島:そもそもIoTって、まずツールありきでそれに合わせていくような、今までのSIのやり方とは違うはずですよね。ITはどうしても技術先行になってしまいがちですが、これからは、ニーズから掘り起こしていく形になると思います。お客さんが抱えている問題に対するソリューションとして、例えば、既存のツールで最適なものがあればそれを利用し、無ければ情報収集ゲートウェイのような新しい仕組みを考え、提案するといった形です。

ビジネスの答えやヒントは、他社の現場に潜在している

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監視に限らず、アプローチの幅を広げ、各業界の現場のニーズに応えていく。

田中:今、AIや機械学習がIT業界を賑わせていますが、明確な目的を持ったデータ収集と分析、改善という点でいえば、製造業や食品業界では、もう10年以上前から取り組まれていることです。例えば、鉄鋼所の歩留まりを上げるとか、食材の不良品をはじくとか、当たり前にやられてきたことなんですね。この先、弊社のデータ収集ゲートウェイのニーズを発掘していく上では、答えやヒントは弊社が持っているのではなく、他社の現場が持っていると考えています。

福原:Zabbixが、監視というオーソドックスな使い方だけでなく、今後、どのように広がっていくのかは、私もとても関心があります。実際に、その答えやヒントを持つお客さんから、引き合いというのはすでに来ていたりするんですか?

田中:そこはノーコメントで(笑)。ただ、たまたま最初にイベントを例にしましたが、例えば来年の東京五輪に向けて、慌てて何か動いているということはありません。今後も、国内各地でいろいろな機会はあるはずなので、スモールスタートからやっていっています。

福原:大丈夫です、話してもらえる内容だけで(笑)。しかし、今回のデータ収集ゲートウェイの話を伺って、こういった本来の目的じゃないZabbixの使い方は、なかなか面白いなと感じました。従来、Zabbixがターゲットにしていなかった層にもリーチするような気がします。

田中:そうですね。ただ、『本来の目的じゃない使い方』というより、『アプローチの幅が広がった』と捉える方が、より正確な表現だと思います。

今はどの業界も当たり前にIT機器を使っていますよね。例えば運送業だと、個別のトラックをすべて監視するまでのレベルではなくても、配送を管理するシステムや監視手段はあるはず。つまり、すでにあるシステムや仕組みのニーズに合わせていくだけなんです。何となくの先入観や技術的な固定観念があって、ITと遠いように見えていた現場も、実はそれほどの距離でもなかったりします。

福原:今日のアジェンダでも、本国のZabbix社に対して、いろいろな機能もリクエストされていましたね。

田中:はい。実際に現場で使うユーザからのリクエストに応える形で、機能がZabbix本体に吸収されていきます。現場にこそ答えがあるという点も、我々のビジネススタンスと同じです。

福島:ラトビアのサミットには、世界中のZabbixファンが集まるので、思ってもいなかった使い方や新たなビジネスの気づきも得られて面白いんですよ。

福原:『リガがあなたを待っています!』ですね。ありがとうございました。

監視のさらにその先を目指す、データ収集ゲートウェイの可能性 - NTTコム ソリューションズ 田中さま・福島さまインタビュー

田中さんは、懇親会のライトニングトークで、ZabbixとGoogleマップの連携を披露。

NTTコム ソリューションズ(株)
https://www.zabicom.com/

 

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