アウトソーシングの目的は「人減らし」じゃない!:現場のプロに聞いてみた(11)

アウトソーシングの目的は「人減らし」じゃない!:現場のプロに聞いてみた(11)

サポートとアウトソーシングについて、Iさんのお話も最終回。前2回の勢いのまま、どうぞ一気にご覧ください(本当は、この倍ぐらい喋っていただきましたが…)!

イレギュラーが起きてもシステムを止めない!サポートの覚悟:現場のプロに聞いてみた(9)
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システム運用も、DXとアウトソースが待ったなし!:現場のプロに聞いてみた(10)
https://un4navi.com/interview/20077/

DevOpsと、サポートとの関係は?

―システム開発と運用が相互協力するDevOpsがいわれて久しいですが、サポートとの関係についてはどうですか?

開発と運用が相互協力するDevOps、運用も開発現場に積極参加!|運用ナビ
https://un4navi.com/efficiency/19018/

I:もちろん、サポートも重要な位置づけです。ただ、大きい組織だと完全に分業制なので、なかなか意思疎通が難しい面も。営業がお客さんからヒアリングしてきた情報は共有できても、温度感までは正確にはわかりません。数が増えるとどうしても手が回らず、十分に考える時間もなくて、すでに実績がある型にはめてしまうこともあります。

―現実は、なかかな難しい、と…

I:そうですね。プロジェクトの期間は短く、スピードも速くなっています。昔のように1年掛かるのではなく、3ヵ月や半年という短い期間で、運用フェーズに入っていくのも珍しくありません。小さなレイヤで始めて、更新や改善を繰り返していくことを考えると、なかなか…。

―クラウドサービスについての、Kさんの話につながりますね。

Azure/GCP/AWSの各クラウドとニーズ:現場のプロに聞いてみた(3)|運用ナビ
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I:はい。クラウドを使えば、サーバをセットアップする時間が不要です。お客さんも、すぐシステムが構築できると思って、プロジェクト期間を短く設定したがる。そうなると、要件定義にも、従来のような時間的余裕がありません。それでも、運用フェーズは、ずっと付き合っていかなければならない。限られた時間の中でも、精度の高いシステム運用設計ができるかが肝です。

―アウトソースを受ける側にも、ゆとりがないと辛いですね。

I:そうなんです。統合型システム運用サービスの機能にしても、折角、現場で役立ついろいろな機能があっても、一部しか使われないと、結局、サポート側で処理しなければならない。開発の打ち合わせすべてに顔を出すことも、現実にはできません。
ただ、私が元々SIの部署にいたので、開発部隊の意図や意識も、ある程度は把握できていると思います。リアルに顔を合わせる人が限られているからこそ、社内でも積極的なコミュニケーションが重要です。

―コミュニケーションは永遠の課題ですね。

I:はい。サポートセンターにまで来てから考えることではなく、プロジェクトの初期段階から、アウトソースすることまで意識して、設計しておく必要があります。この辺りも、お客さんに直接ヒアリングする部署と連携しながら進めることが重要です。

―結局、前回の「人が重要」という話にもつながります。

I:その通りです。弊社には、どうやったら安定したシステム運用ができるか十分なナレッジがあるので、ヒアリング結果に対して、いろいろなアイデアをすぐに出せます。こちらから提案した中から選んでもらうと、決定までのスピードも速く、コストも抑えられ、お客さんの満足度も高められます。
システム化すればするほど、個人の力量がビジネスを左右するので、この部分は、今後、チーム全体で力を入れていなけければならない部分です。

アウトソーシングの目的は「人減らし」じゃない!:現場のプロに聞いてみた(11)

「人減らし」がアウトソーシングの目的ではないはず

―そもそも、システム運用のアウトソースで、成果が出ている企業は多いんですか?

I:もちろんです。今まで現場の人たちは、上から指示される定型的な業務をこなしていた。それが、システム運用のアウトソーシングによって余裕が生まれ、本業へ原点回帰したことで、新しい製品やサービスを開発し、次のビジネスチャンスへとつなげる意識が芽生えているようです。もちろん、アウトソースだけが成功の原因ではありませんが、成果が出ることで、自分は次に何をすべきか考え続ける好循環につながっています。

―そうじゃないと、意味がありませんね。

I:はい。アウトソーシングは、「人減らし」が直接の目的ではありません。特に日本の企業文化の場合は、どうしても人がいなければ回らない仕事が多いですよね。お客さんと対話しながら、仕組み化・自動化できるところと、人が関わらなければならないところを見極め、余裕が生まれたリソースで、ビジネスを次のステップへ進める。ここまでつながらないと、本当の成果にはなりません。

―RPAでも『非効率な手順をそのまま自動化しても無意味』という指摘があります。

I:アウトソーシングも、まさにその通りです。
サービスが活きているか「正常性」「サービス確認」する手順も、例えば、アラートを検知して手順を実施するまでが、20分掛かってしまう場合、それ以上に早くできない。つまり、20分掛かってしまう手順にこそ問題があるんです。そんな状態でアウトソースしても、十分な結果が得られるはずがありません。
運用フェーズですぐ改善できることは限られます。ヒアリングの甘さや、無理をして圧縮した期間などによる弊害は、僕らの手間が増えるだけでなく、結局、お客さんにも迷惑が掛かります。

アウトソーシングの効果を高め続けるミッション

―ITシステムのアウトソーシングは、今後、減ることはなさそうです。

I:そうだと思います。サービスの機能も増えるので、選んで組み合わせて利用するようになります。しかも、変化のスピードも速い。そんなノウハウがある人材が、情報システム部にいるとは限りません。システム運用フェーズの形態として、サービスセンターだけで十分なのか、お客さんの現場にSIが常駐するのかといった形は変わるでしょうが、アウトソーシングのニーズが減ることはまずないでしょう。
そこに、ビジネスチャンスがあると思っていますが、私自身は、サポートの強みを十分に示せていないジレンマも感じています。

―ジレンマというと?

I:システム運用は、お客さんごとに個別に設計し、実際に動き出したら運用していくという、何もない状態からの息の長い仕事です。しかも、業務が違うので、なかなか定義しにくい・売りにくいんです。本当は、業務運用まで任せていただけると嬉しいんですが、一足飛びには難しいですね。

―フルオーダーですからね。

I:はい。やはり僕らの強みは、お客さんに最適な総合的マネージメントを提供できる点です。仕事としてのサポートを魅力ある形に変えてアピールしたり、アウトソースのメリットを訴求していくことは、仕事を広げていくには必要なことなので、重要なミッションだと考えています。

 

人とシステム双方の効果を高めるための「攻め」のアウトソーシングであるべきで、人を減らすことだけを目的とするのは本末転倒。クラウドサービスが徐々に、しかし確実に普及したように、システム運用のニーズは2020年もますます高まりを見せそうです。御社も、できるところから検討してみてはいかがでしょうか?

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