システムの冗長化という、3つの視点から考えるBCP対策とは?

新型コロナウイルスのパンデミックと、その後に続く深刻な余波で、企業の「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」が現実の課題となりました。元々、日本は地震や台風などの自然災害も多い国です。現代のビジネスは、ICTを抜きには成り立たないため、『どのような事態が起ころうと、いかにシステムを止めずに、運用させ続けることができるか?』が、BCP対策の柱の一つです。今回は、システムの冗長化における3つの観点から、BCP対策を考えてみます。

災害も障害も忘れた頃にやってくる!平時に考えたい事業継続計画
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1.ITインフラの冗長化

テレワークへの対応が不可欠となり、出社と組み合わせたワークスタイルが広く普及していますが、そのためのシステムを構築する場合、オンプレミスとクラウドでは、少し条件が異なります。

まず、オンプレミスでは、本社やデータセンターなどのサーバを集約している拠点では、以下のようなトラブルが想定されます。そのため、既存のシステムよりも高トラフィックに耐えられる回線や信頼性が高いネットワーク機器などを用意した上で、さらに冗長化を施す必要があり、それらを全て自社で実施する必要があります。

  • 集約拠点の回線に障害が出た場合、リモート先からアクセスできなくなり、業務がストップする。
  • 集約拠点には、各拠点やリモート先からのアクセスが集中する。特に、ビデオ会議は帯域を圧迫するのでネットワークの遅延などを招きやすい。

一方、クラウドサービスを利用している場合は、本社やデータセンターであってもクラウドから見れば拠点の一つでしかないので、オンプレミスの場合ほど要求は高くありません。しかし、組織全体から見て重要な拠点であることには変わらないので、相応の冗長化が必要です。

対策として、ITインフラの冗長化があり、方法には以下の3つがあります。復帰までの時間やコストなど、システムの目的に合った方法を選択します。

  • ホットスタンバイ:運用系と待機系の装置を用意し、電源が投入された状態で待機しておき、障害が発生した時に即座に切り替える。
  • ウォームスタンバイ:待機系に電源は投入せず、障害が発生した時に、手動または自動で待機系を起動する。
  • コールドスタンバイ:同一機種を用意しておき、緊急時には必要な設定をして故障機と入れ替える。

2.ロケーションの冗長化

前述のITインフラの冗長化は、同じ環境を複数用意する多重化が中心で、確かに障害対策にはなります。しかし、建物の被災などには無力なので、地理的に分散化する必要があります。テレワークも、オフィスを社員の自宅などに分散させると考えれば、広い意味でロケーションの冗長化に含まれます。ITインフラを多重化した上で分散化すれば、より強靭なBCP対策になります。これも、システム運用の面から有効な冗長化策です。

  • 地理的な分散:メインのサーバは東京本社、バックアップのサーバは大阪支社など、十分に地理的に離れている場所に設置する。
  • 電力の分散:別の電力会社の電力網に分散させる。

3.人的資源の冗長化

従来のBCP対策はITインフラの冗長化など、ハードウェア的な側面ばかりが重視され、人的資源というソフトウェア面の対策は疎かにされがちでした。しかし、バブル崩壊以降はリストラの圧力が高まって、企業には余剰人員を抱える余裕はなく、どの部署も最低限の人数で業務を回すことが常態化しています。

そのため、システムが属人化・ブラックボックス化してしまっている現場も多いのではないでしょうか。しかし、ウイルス感染症や災害、病気などで、システム運用担当者が、ある日突然、業務ができなる可能性はいろいろなところに溢れています。ブラックボックス化したシステムのまま、限られた人数の運用担当者が業務不能になってしまうと、最悪の場合、企業全体のビジネスが停止してしまうリスクすらあります。

そのような最悪の事態を防ぐためにも、運用手順書などのドキュメントの整備や、複数の業務を複数人で共有するなど、ナレッジを共有する仕組みを構築する必要があります。

ただ、口では簡単にいえますが、システム運用担当者は日々の運用で精一杯で、さらにドキュメントを作成している余裕などありません。ないから、属人化しているのです。

人的資源もITインフラと同様に多重化と分散化が重要ですが、前述の通り、なかなか経営陣の理解を得づらい面もあります。自社で新たな人材を抱えることが困難でも、例えばシステム運用に適したサービスで省力化したり、運用や保守をアウトソースすることで、現在の貴重な人的リソースを疲弊させないことは非常に重要です。

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「無駄」は、何を守るためのなのか?

コロナ禍でいろいろな現実が明らかになりましたが、その一つが「真に機能するBCP」の重要性でしょう。冗長という言葉は本来、「無駄や余計なもの」という意味です。しかし、システムが冗長化されていれば、障害が発生した時にも、バックアップ環境で運用して業務を継続しつつ、余裕を持って障害対応できるメリットがあります。だからといって、いたずらに冗長化すればシステムはどんどん複雑化し、コストと運用の負担となって跳ね返ってきます。

厳しいビジネス環境になったとはいえ、今からでも遅くはありません。システム運用を徹底的に効率化し、強靱な体制を作りましょう。「止まると深刻な影響を受ける業務」と「止まっても止むを得ない業務」を切り分け、無駄にならない冗長化とコストのベストバランスを探り続け、必ず来る次の危機に備えましょう。

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