2020年の夏は5Gで回線が逼迫?:現場のプロに聞いてみた(8)

増大し複雑化する日本のトラフィック:現場のプロに聞いてみた(7)

SD-WANから始まった、ネットワークの現場を知るSさんの興味深いお話。今の日本のネットワークは高品質・低価格で安定しているとはいえ、やはりネットワーク絡みでやはり気になるのは、開催が来年に迫った世界的ビッグイベントです。

増大し複雑化する日本のトラフィック:現場のプロに聞いてみた(7)
https://un4navi.com/interview/19069/

2020は、ネットワーク業界にとっても節目?

―変化でいうと、来年の東京五輪は、やはり業界にとっても大きな転機になるんですかね?

S んー、どうなんでしょうねぇ。確かに、4K/8Kの動画配信や、VR/ARなどのリッチコンテンツが一気に日本国内で作られるので、海外からのアクセスが膨大に増えることは間違いないです。これは通常の、海外のサーバに置かれたコンテンツが人気を集める状況とは逆方向ですね。報道関係者やインバウンドの観光客が来ることで、日本から海外への通信は増えるでしょう。
また、期間中は、首都圏の通勤も大変ですし、物流も全国的に影響を受けるので、普段とは違う拠点で働く人は確実に増えると思います。Web会議や音声会議、仮想デスクトップなんかも、今まで使っていなかった会社にまで広がるでしょうね。VPNとかセキュリティもますます重要になるはずです。

―5Gネットワークが普及すると、いろいろなことが大きく変わりそうです。

S まず、企業にとっては、安定したネットワークで5Gが普及すると、LAN/WANの必要性が減ります。日本国内の企業なら、ほぼ全キャリアの5G回線を持っていればまず安心でしょう。ローカル通信をせず、クラウドでアプリケーションが使えればOKなので、必要なのは、せいぜい手元に置いておくプリンタぐらい。

―そこまでして、紙にこだわるのもどうかとも思いますが…(笑)

S そうですね。また、システムそのものが、オンプレミスではなくクラウドになっていきます。例えば、Office 365用のセッション数が莫大に増え、普通のゲートウェイ環境に耐えられずに業務が止まってしまっていたのが、5Gやリモートワークが普及することで、今度はWANという存在が邪魔になるわけです。LAN/WANの運用が不要になってシンプルになることで、障害に対しても強くなるでしょう。

―オリンピック憲章では、競技は選手間の競争であって、国家間の競争ではないと定められています。それとは別の、通信の国際間競争もありそうですね。

S もちろん。世界で最もネットワークが進んでいる国の一部の地域では、すでに5Gが始まっています。日本でも、対応デバイスが普及し始めるのと同時に、来年がきっかけになって都心部から徐々に広がっていくでしょう。
ただ、通信ってオープンじゃなくて、国防の一つですから。10連休明けの今年5月、アメリカ政府からファーウェイ(華為技術)が制裁を受けて大きなニュースになりましたよね。元NSA(アメリカ国家安全保障局)職員だったエドワード・スノーデン氏が、NSAの個人情報収集の手口を告発して国際問題になった事件は、今も続いています。

―利便性vsプライバシーやセキュリティという、永遠の課題ですね。

S はい。個人のデータがどんどんクラウドに吸い上げられている中、通信ネットワークは、常に、国と国との利権や企業間のビジネスに深く関係しています。日本も、サイバーセキュリティの重要性が認識されたり、EUのデータ保護政策であるGDPRの日本版の整備に向けた動きが出ていますが、まだまだ遅れています。
通信は国防の一つである一方、インターネットの理念はオープンです。国や企業、教育研究機関などが連携し、この相反する課題のバランスを上手く取っていくことが、発展の鍵になるでしょう。

総務省|平成30年版 情報通信白書|パーソナルデータの国際流通
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd112210.html

 

SD-WANにネットワーク屋がモヤるワケ:現場のプロに聞いてみた(6)―全体のお話を伺うと、システム運用がますます難しくなっていきそうです。

S 残念ながら、そうなっていくでしょうね。
ユーザから『サービスが使えない!』という報告が来た時に、いろんな接続環境がある中で、何が問題なのかがさらにわかりにくくなっていますから。会社でその日、自分が使う机の場所を好きに選べる、フリーアドレスにしてもそうです。今までだと、机の場所がわかれば、デスクトップPCやローゼット、スイッチなど、詳細がすぐわかりました。今は、チームでチャットツールを通じて会話したり、ビデオ会議していても、その人がどこにいるかわかりません。
人の管理はどんどん難しくなっているので、応急処置や原因究明のために『あなたは、今、どこにいるんですか?』から始めなければなりません。情シスの人たちは、本当に大変だと思いますよ。

 

一人のビジネスマンや、いち国民としては、ネットワークの安定やさらなる高速化はありがたく、大きな可能性に期待したいところです。同時に、システム運用担当者にとっては、緊張感あるお話しも伺うことができました。ネットワークの現場を走り続ける人たちには、瞬発力とスタミナ、正しい最新情報に基づいた冷静な判断など、総合力が必須のようです。

SD-WANにネットワーク屋がモヤるワケ:現場のプロに聞いてみた(6)
https://un4navi.com/interview/19068/

増大し複雑化する日本のトラフィック:現場のプロに聞いてみた(7)
https://un4navi.com/interview/19069/

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