SD-WANにネットワーク屋がモヤるワケ:現場のプロに聞いてみた(6)

増大し複雑化する日本のトラフィック:現場のプロに聞いてみた(7)

技術の現場で日々奮闘する、プロフェッショナルの皆さんへのインタビュー。今回は、SD-WANを皮切りに、ネットワークを巡る最近のお話をSさんに伺いました。

SD-WANという呼び方があんまりイケてない理由

S 個人的には、SD-WANって呼び方はあんまり好きじゃないんですよね。

―いきなりそこから始まりますか(笑)、ナゼなんですか?

S 企業も個人もですが、皆さんがネットワークに求めているのは、所詮『安くて、速くて、安定している』こと。本質的には、この3つだけなんです。結局、ネットワークの中身ってそんなに変わらなくて、SD-WANにしても、一所懸命呼び方を変えて新しいように見せていますが、正直、別に新しい技術ではないんです。

―ちょっとディスり気味ですが、大丈夫ですかね…?でもSD-WANって、回線の負荷を減らすには有効な手段の一つなんですよね?

S それはその通りです。SD-WAN(Software Defined WAN)とは、ソフトウェアを使った動的な制御でWAN(広域ネットワーク)を管理運用するサービスです。インターネットゲートウェイへの一極集中を防ぐために、「インターネットブレイクアウト(ローカルブレイクアウト)」と呼ばれる方法で接続する仕組みです。特定のアプリケーションだけを、各拠点から直接インターネットへ迂回して接続させることで、インターネット回線やネットワーク機器に負荷が掛かってパフォーマンスが低下するのを防ぎます。

―ちょっと安心しました。とすると、一体何が問題だと?

S 弊社は、インターネット回線事業をやっている、いわゆるネットワーク屋です。なので、一般の企業やメーカー、アプリケーション開発企業とは捉え方が違うんです。
弊社のビジネスは、お客さんのトラフィックを自社で持つバックボーンに流してもらうことで成り立っています。ブレイクアウトで迂回して接続される先は、結局インターネット。つまり、別にどこでブレイクアウトされても一緒なんで、ローカルでブレイクアウトする必要はないんです。
確かに、ユーザさんからは『どうやら、SD-WANっていうのを使うといいんでしょう?』という相談は受けますよ。ただ、元々ネットワークから全てをやっている弊社としては、SD-WANという流行り言葉で積極的にプロモーションをしているわけでも、ハードウェアを売っているわけでもないんです。

SD-WANにネットワーク屋がモヤるワケ:現場のプロに聞いてみた(6)

元々高品質な日本のネットワーク

―なるほど。SD-WANも有効ではあるけれども、そこまで声高にいう必要があるのか、と。

S そうなんです。SD-WANは、回線品質が高い割に料金が安い日本よりも、回線の料金が高いアメリカやアジアなど海外で人気なんです。安いインターネット回線を複数仕入れてそれらを束ね、予備装置にも仕事をさせる「アクティブ・アクティブ」構成で接続させる使い方です。昔の「WAN高速化装置」と同じようなものです。
WAN高速化装置にしても、日本で、今ひとつ流行らなかったのは、元々回線が十分安く、品質も高いからなんです。SD-WANも同じように、ある程度は売れているんですが、日本でそこまでの大きなニーズにはなっていません。わざわざ高いSD-WANを入れて、太く束ねる必要がないからです。ただ、これがグローバル企業だと、事情が変わります。例えば、東南アジアだと、専用線ですらブチブチ切れますからね。小さい組織ならモバイルネットワークでも十分ですが、ある程度の規模以上のところは地域差で苦労するので、SD-WANなどの対策が必要です。

―地域差といえば、日本のネットワークって、世界的に見ても安定してますよね?

S はい。日本は、ネットワーク回線は品質が高い上に価格も安く、選択肢も豊富です。モバイル回線も、どっからでもつなげられるようになっています。
しかし、電気や水道が止まると生活すべてが止まってしまうように、どれほどネットワークの品質が高くても、障害が起きればすべてが止まってしまいます。データセンターやクラウド、アプリケーションがどうとか関係ないです。それだけネットワークの重要性は上がっているんですが、残念ながら、ネットワーク屋が陰で必死に支えている現状は変わらないんです。

 

元々、高い回線品質を誇る日本のネットワーク。SD-WANといっても、バックボーンを扱っている立場とそうでない企業、日本国内と海外、それぞれで使われ方やニュアンスに微妙な違いがあるということでした。さて次回は、増え続けるだけでなく、ますます複雑になっていくトラフィックについて。

IIJが明かす、クラウド時代における「本当の」ネットワーク課題と解決策 | マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/kikaku/20191023-909817/

SD-WAN「インターネットブレイクアウト」の落とし穴 – IIJ Omnibusで課題を解決
https://www.iij.ad.jp/svcsol/campaign/omnibus_201810.html

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