オープンソースはタダじゃない!価値を活かす適切な管理とは?
近年、企業がビジネスで使うシステムの重要な部分にも、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)が導入されるケースが増えています。もちろん、システム運用のソフトウェアも例外ではありません。
OSSというと、無償で使えることばかりが注目されがちですが、有償のサービスに劣らない機能が充実しているソフトウェアも多く、高い透明性や優れたメンテナンス性も特徴です。システム運用や保守で使うサービスでもメリットが豊富なので、使わない手はありません。
ただしそれも、目的に合った使い方と適切な管理がセットなことが大前提です。つまり、ソフトウェア自体が無償な分、それ以外の重要なところに、きちんと十分なリソースを回す必要があるわけです。この記事では、OSSに関する誤解を解きながら、その本質を理解していきましょう。
そもそもオープンソースソフトウェアは、なぜ人気なのか?
まずは、OSSの人気の秘密を探ってみましょう。
デベロッパーはなぜ、ソフトウェアをタダで世界に公開するのか?
OSSとは、その名の通り、開発者がそのソースコードをオープンにし、インターネット上に無償で広く公開しているソフトウェアです。元の開発者でなくても、誰でもソフトウェアを自由に使ったり、変更や改良が可能です。OSSをビジネスに商用利用するのにも、料金はかかりません(ただし、それぞれのライセンスの確認は必須です)。
開発者がソフトウェアを無償公開している理由や動機は、人によって異なりますが、ITの発展に貢献したいという気持ちは共通しています。世界中のプログラマーやエンジニアたちがOSSを作って公開するコミュニティーでは、ソフトウェアの開発・管理は透明性が担保されています。元のOSSを改良・改変したOSSが再配布され、それがさらに改善を加えられ拡がっていきます。
また、優れたプログラマーやエンジニアのスキルが広く認知されることで、新しいキャリアパスへとつながる場にもなっています。
用途やバリエーションが豊富で、有償版より優れているOSSも
OSSの種類や用途、機能、プラットフォームはさまざまで、OSやデータベース管理システム、プログラミング言語などが公開されています。例えば、主要なWebブラウザのコア部分に採用されているのもOSSです。同様に、システム運用をサポートするソフトウェアにもOSSが存在します。単に無償というだけでなく、有償ソフトウェアよりも優れた機能を持つOSSも数多く存在し、幅広く使われています。
システム運用で使えるOSS
では、企業が自社のシステムを運用するとき、どのようにOSSを活用すればいいでしょうか。
システム運用でよく使われるOSSの一つに監視があります。例えば死活監視という業務は、サーバそのものや、サーバ上で動いているソフトウェアの稼働状況をチェックします。リソース監視では、サーバのCPUやメモリ、ディスクなどのリソースの状況を確認します。また、システムの稼働状況を記録したログを収集分析したり、ジョブの実行を制御する時に使われます。
UOMとの相性もいいZabbix
Zabbixは、知名度が高く人気のシステム監視サービスで、死活監視やリソース監視の他、予測監視にも対応しています。特定の項目に関して一定期間内に数値を収集して、将来的にどのような数値になるか予測し、サーバのリソースが将来的に枯渇しないかや、アラートが鳴りそうかなどを調べます。IIJの統合運用管理サービス「UOM」との組み合わせも有効です。
【Special】認知向上で増えたZabbixの「指名買い」― Zabbix Japan LLC 寺島さま インタビュー(1) | 運用ナビ
https://un4navi.com/interview/20117/
サーバ監視ツールとしてはこれ以外にも、エージェント型やメトリック型と呼ばれるいろいろなサービスがあります。サーバの稼働状況をほぼリアルタイムでグラフ化したり、監視対象を自動的に追従して異常や異常の兆候を素早くキャッチしたり、非常に強力な機能を提供しています。
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OSSの正しい理解1:トータルコストはゼロではない
次に、OSSに関する誤解を解きながら、システム運用での位置づけを考えてみましょう。
まず最初の誤解は、『OSSはタダだから、システム運用のコストが簡単かつ劇的に下げられるはず』です。情シス担当者が予算を申請する時に、経営者から聞くお馴染みのフレーズかもしれません。もし、OSSに置き換えられる部分だけを見れば、確かにコストは抑えられます。しかし無償なのは、OSSのソフトウェア部分だけ。OSSを導入してもシステム運用全体のコストは、有償のソフトウェアを使った場合と比べて劇的に下がることはありません。
その理由は、『OSSを使いこなして成果を上げ続けることは、無料ではないから』です。メーカーサポートがないOSSを使いこなせるエンジニアは高いスキルを持っているため、それなりの人件費や教育体制が必要です。
例えば、腕のいい大工が10年以上使っている道具で家を建てても、『道具はもう減価償却して0円のはずだから、代金を安くしてほしい』とは交渉しないでしょう。ツールが無償でも、その作業賃が下げられないのはこれと同じ理屈です。むしろ、同じ無料の道具を使えば、エンジニアの経験の差がハッキリ出ます。
OSSの正しい理解2:機能は適切に更新・管理される
『タダのOSSはβ版みたいなもので、脆弱なのではないか?』―システム運用エンジニアとしては気になる点ですが、これも誤解です。
一般に、ソフトウェアやサービスには「β版」という位置づけがあります。正式リリース前の製品を市場に投入して、実践で性能を磨き、結果をフィードバックしていくためのステップです。機能や品質、サポートを保証しない代わりに、無料で提供されます。詳細はメーカーにしかわからず、脆弱性を発見して報告はできても、ユーザ自身が改良したり再配布はできません。
これに対して、OSSはβ版ではありません。リリースごとに機能が明示され、ライフサイクルに沿ったアップデートが提供されます。もちろん、セキュリティ面の機能が制限されるようなこともありません。バグやアップデートなどの情報はコミュニティーで迅速に共有されます。世界中の実名・匿名のエンジニアたちが協力し合って開発し、適切に更新・管理されています。
コストを掛けるべき真の価値とは?
『タダより高いものはない』『安かろう悪かろう』―ビジネスでは、昔からこの2つの標語が現実でした。しかし、IT化と共にOSSという概念とソフトウェアが知られるようになり、実際に普及しだして以降、『タダでもよいものはよい』という新しい考え方が生まれました。OSSは、無償でありながら高機能という、経済合理性に基づかない性質があり、『サービスという単語は「0円」を意味する言葉ではない』ことの象徴ともいえます。OSSはコンピュータ文化が生んだ宝物といってもいいでしょう。
システム運用の現場にも、OSSが幅広く導入されています。しかし、システム運用全体のコストを下げるためだけに、安易にOSSを導入するべきではありません。それはつまり、コストを掛けるべき真の価値はどこにあるのか?という根本的な問いにつながっています。限られた貴重なリソース配分を見直すためにも、OSSの視点からシステム運用全体を俯瞰してみるのも必要です。
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