システム運用だって設計が必須!設計の視点が運用担当者を救う!
入念に設計し、テストを繰り返して開発したITシステムでも、程度の差こそあれ、将来トラブルが起きることは避けられません。障害が発生することを前提としたフェイルセーフの考え方で、サービス全体を設計しておく必要があります。つまり、「作る」開発と同様に「使い続ける」運用側でも、プロセスを設計しておくことが重要です。
運用設計とは?メリットは?
運用設計とは、システムを安定して稼働させるための、システム運用のフレームワークを作ることです。日常的・定期的に各現場で処理する作業や、 障害対応のルールやプロセスなど、運用担当者に必要な情報をまとめます。運用設計しておくことで、ビジネスに影響が出るリスクを最小限にできます。
◯運用設計のメリット
- システム運用全体の効率化・最適化
- 定期的な作業の簡素化・自動化
- 障害に対する迅速な対応
- トラブルの事前回避
- 運用の属人化・ブラックボックス化を回避
- 運用のコストパフォーマンスを意識
例えば、防犯ブザーを安全に使い続ける設計とは?
「設計」と聞くと、開発や構築前のフェーズが思い浮かびますが、運用でも必要な設計とは、どのような違いがあるでしょうか?ここでは「子供に持たせる防犯ブザー」を例に、両者でいう設計の違いを考えてみましょう。
◯開発・構築設計
機能やスペックなど、物やサービスそのものについて、細かく設計します。
- 音:100db
- 防水機能:生活防水 IPX5
- ストラップ:強く引っ張ると、外れて警告音が鳴る
- ボタン:押しても警告音が鳴る
- 大きさや重さ、材質、カラー、電源、価格 など
◯運用設計
誰が、いつ、どこで、どのように使うのかを、細かく設計します。
- 対象:小学生
- 対応:保護者や学校は、連絡を受けたらどうするか?
- 停止:どうやって警告音を止めるか?誤動作させてしまった時の対応は?
- 破損や紛失:どのように対処するか?
- 定期点検:電池が切れていないか、どうやって確認するか? など
このように、安定した品質でサービスを提供し続けるには、開発段階からシステム運用までセットで考え、運用設計しておくことが重要です。
<PR>限られた人材で、効率的に運用できるように事前に計画しておくのは、まさにシステム運用の「設計」。SaaS型の運用サービス「UOM」を最初から使う設計にすれば、エンジニアも楽!詳しくはこちらへ
何を運用設計で決めておくか?
次に、具体的に何を運用項目として設計しておくか、例を考えてみましょう。運用項目の内容は、要件定義と基本設計によって決まりますが、システムによって異なります。
具体的な設計項目(例)
1.基本方針
運用設計の目標と概要
2.業務内容
どのような業務なのか、運用対象となる作業を定義します。
- システムによって実現する業務の概要
- システムを利用するユーザ など
3.システム管理項目
システム運用の中で、何を管理するかを定義します。
- システム本体
- インフラ(サーバ、DBなど)
- ファイルサーバ
- バックアップデータ
- ログファイル など
4.システム運用体制
実際にシステムを運用するための、チーム体制を定義します。
- 統括責任者
- 運用責任者
- システム監視者
- ユーザサポート責任者
- 開発責任者
- 開発担当
- 保守担当 など
5.運用スケジュール
運用項目とスケジュールを定義します。
- 日次、月次などの作業スケジュール
- 定期および不定期の作業項目 など
6.データ管理
システムで扱うデータを定義します。
- ファイル
- データベース
- データの保存期間
- トランザクションデータ など
7.監視設計
監視する範囲や方法を定義します。
- 監視対象(サービスやアプリケーション、データベース、ネットワーク、ハードウェアなど)
- 死活監視
- 性能監視
- セキュリティ監視
- 監視方式、しきい値、ログの文言、通知先
- ログ取得、ログローテーション、ログデータの圧縮、保管 など
8.バックアップ設計
データのバックアップ方法やスケジュールを定義します。
- バックアップ方式、対象データ、容量
- データ
- 保管媒体
- ログデータの圧縮、保管
- 監査対応、モニタリング
- バックアップスケジュール など
9.障害対応
- 対応のフロー
- システムからの報告(管理担当)
- ユーザからの報告(ユーザサポート担当)
- エスカレーションルール
10.災害対応
- 事業継続計画(BCP)
- ディザスタリカバリ(DR)など
11. JOB管理設計
- JOB一覧(登録・実行)
- 異常時の対応 など
運用設計書など、ドキュメント化
運用設計した内容は、運用設計書など、さまざまな形にまとめておきます。サービス運用や管理の事例集であるITILに準じた、システム運用を効率化するために必要な書類で、障害が発生した時や、担当者が異動したり着任した時にも参照されます。
- 運用設計書
- 運用項目一覧
- 運用基準書
- 運用プロセスフロー
- 手順書
- 作業チェックリスト
- 管理台帳(インシデント管理簿など)
- 帳票(作業指示書など)
- 運用スケジュール
- 運用報告書 など
サービス運用や管理の事例集 ITILについて知ろう:ITILの基本(1)
https://un4navi.com/management/19007/
システム運用にも重要な、設計という視点
DevOpsという概念が示す通り、理想をいえば、運用設計は要件定義・設計など、なるべく早い開発段階で着手しておくことが望ましいタイミングです。開発の初期段階から運用担当者が関わっておくことで、システム運用の品質維持と効率化がスムーズに実現できます。運用に必要な機能を、開発段階で組み込むことで、コストメリットも生まれます。
しかし、新システムの開発時だけでなく、現在、稼働しているシステム運用についても、運用設計という視点を意識することを強くお勧めします。問題なく動いているシステムに対して、わざわざ運用設計するリソースが難しくても、例えばシステム更新時など、運用フローを見直す時はチャンスです。効率化や自動化のための運用サービスの導入、クラウド環境への置き換え、技術のアップデートが必要になった場合も、必ず役に立ちます。できる範囲から、検討してみましょう。
開発と運用が相互協力するDevOps、運用も開発現場に積極参加!
https://un4navi.com/efficiency/19018/
<PR>システム安定して稼働させ続けるには、事前対策としてのシステム運用設計が重要なキーです。そこにSaaS型の運用サービス「UOM」も組み込めば、シンプルな運用が可能!詳しくはこちらへ