設計に至る運用エンジニアのキャリア:現場のプロが語ってみる(3)

IIJの福原です。運用設計とは、機能や作業レベルの話ではなく、システム運用全体に対する思想や哲学です。個別の業務にばかり気を取られず、大局的な視点から本当に注目すべきポイントが分かれば、効率化は十分可能です。今回は、評価されにくいシステム運用という仕事でも、地道なエンジニアの働きが、システムの安定を支えているという話をしてみます。

開発と運用、それぞれの設計における「時間軸の差」

一般に「設計」と聞くと、何かを作る前の段階の話だと思われがちです。システム開発にも、開発設計というプロセスがありますが、サービスを安定して稼働させつつけるシステム運用にも、運用設計という重要な工程があります。さまざまな条件を確認し、計画を立案して、そのために必要な技術や人を揃え、確実に実行するという点では同じです。ただ、大きく違うのが時間軸です。
Webシステムを作る場合を例に考えると、当然、まず土台となるインフラを構築するのが、時間的に先ですよね。フロントエンドの仕組みやコンテンツを作るのは、その次。そして、それを効果的に保守管理し運用していくのは、さらにその後になります。
システムの仕様がさまざまであることは間違いないですが、先に開発設計に準じて作られたシステムに対して、運用を設計し、それに準じて運用していくという時間軸の順番だけは変わりません。
ある程度以上の規模の組織だと、インフラやアプリケーション、運用など、それぞれの業務が分かれているので、どうしても後の工程である、運用の現場に一定の負荷が掛かるのは仕方ない面もあります。開発と運用が連携するDevOps的な思想もあるとはいえ、現実には、運用は開発の後追いをせざるを得ません。ただ、その負荷をできるだけ抑えることが、運用設計する意義でもあります。

開発と運用が相互協力するDevOps、運用も開発現場に積極参加!
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運用設計ができる、エンジニアのキャリアとは?

『これを覚えたら、運用設計できるようになる!』という明確な基準はありません。必要な知識は、サーバやネットワーク、インフラ、アプリケーション、監視、保守、ミドルウェア、セキュリティ、サービスデスクなど、挙げれば切りがないですから。いろいろな現場を経験しながら、自分ができるスキルを増やしていく過程で、少しずつ設計業務を任されていくというのが、一般的ではないでしょうか。ひとり情シスのエンジニアや、小規模な組織だと、ほぼ全部自分でやらなければならないので大変ですが、その反面、システム全体をひと通り見渡せます。きちんと把握しておかないと、すべて後から自分に返ってきますからね。

自分の未来をどう描く?システム運用担当者のキャリアパスとは?
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私は、エンジニアの中途採用で面接に立ち会うこともありますが、その人が運用設計のスキルをどの程度持っているかは、いくつか質問すれば大体わかりますよ。少し突っ込んだ質問を投げかけて、こちらが納得できれば、一応のラインはクリアしていると評価できます。もし、私が知らないユニークな意見や考え方を聞けたりすれば、俄然、興味が湧きますよね。
逆に、全然要領を得ない返事だったりすると、『自分を無理に大きく、高く見せようとしているな』とすぐにバレます(笑)。人の話や状況を十分に理解せずに勝手にやるシステム運用設計は、「設計」ではなくただの「設定」です。設定することを「仕込む」と呼んだりしますが、意味も分からずに、ただいわれたことを仕込むだけでは、実際の設計にはほど遠いですね。

運用設計で重要なことは、テクニカルなスキルがどれほど優れていても、関係各所とのコミュニケーションや調整ができないと、仕事はスムーズに進められないということです。現場の担当者やパートナー、マネージャ、場合によっては経営層など、さまざまな人たちと関わる業務です。どんな仕事でもそうかもしれませんが、人と人との関係を上手くマネージメントできる高い能力がなければ、運用そのものがスムーズに進みません。結果が出なければ、組織内での評価にも、自分のキャリアにもつながらない。もちろん、頭を使う仕事ではありますが、組織内での根回しや調整、気遣いも欠かせない、泥臭い仕事だともいえます。

ただ、若い内から、技術も貪欲に覚えて、ストレスにも耐え、人間関係も上手くこなすというのは、まず無理でしょうね(笑)。経験が浅い内は、 少なくとも自分の活動範囲を自分で狭めたりせず、いろいろな現場にチャレンジしてみるのがいいでしょう。先輩や同僚、パートナーさんたちがやっていることを見て、鍛えられながら覚えていく。ポジティブな刺激も感じ、時には失敗もしながら、自分と周りからの評価を受ける過程で、自分がやりたいことや、向いていることが段々と分かっていくのだと思います。数々の現場を経験して溜まった有効なナレッジは、業務の改善や次のシステム運用にも活かされていきますが、エンジニア個人の力にもなっていきます。

次回は、そもそものシステム運用業務の意義や、運用エンジニアのマインドに触れましょう。引き続きご期待ください。

【前回までの連載内容はこちらからご覧いただけます】

【連載1】運用設計って一体どんな仕事なのか?:現場のプロが語ってみる(1)
https://un4navi.com/prologue/20081/

【連載2】正解がない運用設計という「思想」:現場のプロが語ってみる(2)
https://un4navi.com/prologue/20082/

IIJ_福原亮株式会社インターネットイニシアティブ
クラウド本部
システムクラウド本部
クラウドサービス3部 副部長 兼 M&Oサービス開発課長

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