日本でのビジネスの現状とZabbix 5.0への展望 – Zabbix社CEO アレクセイ・ウラジシェフさまインタビュー
ユニバーサルな環境で使える、エンタープライズレベルの監視ソリューションであるZabbix。サーバやネットワーク機器、サービス・その他のITリソースを監視・追跡する、オープンソースの監視ソフトウェアです。UOMも「UOM for Zabbix」というプランがあり、つながりが深い間柄です。
毎年、日本で開催されている「Zabbix Conference Japan 2019」に合わせて11月に来日された、Zabbix LLCの創設者でCEOのアレクセイ・ウラジシェフ(Alexei Vladishev)さんにお話を伺いました。日本のビジネスの現状や、10月にリリースされたZabbix 4.4、次に期待が高まるZabbix 5.0などについて、語っていただきました。
Zabbix Conference Japan 2019
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2019
Zabbix LLC
創設者兼CEO アレクセイ・ウラジシェフ(Alexei Vladishev) さま
日本におけるZabbix社のビジネス展開の現状
IIJ 福原(以下、福原):お忙しい中、ありがとうございます。カンファレンスが終わったばかりで早速ですが、7回目になる今年の「Zabbix Conference Japan 2019」の全体的な印象はどうでしたか?
アレクセイ・ウラジシェフ(以下、アレクセイ):とても満足しています。今年も、昨年と同様に多くの皆さんにご参加いただきました。たくさんの日本のユーザやパートナーの皆さんに、改めて感謝いたします。
福原:10月にラトビア本国で開催された「Zabbix Summit 2019」も盛況だったようですね。私もお邪魔しました。
アレクセイ:はい。過去最大の500人を越える参加者が、45カ国以上の国や地域から集まっていただきました。日本からも、20人以上の皆さんにご参加いただいたり、YouTubeのライブストリーミングを見てもらいました。
Zabbix Summit 2019
https://www.zabbix.com/events/zabbix_summit_2019
Alexei Vladishev – Zabbix 4.4: monitoring beyond borders | YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=qJQGSX24G-A
福原:御社トップの方への取材としては、今年の6月に開催されたInterop Tokyo 2019で、Zabbix Japan代表の寺島さんにもお話を伺って以来です。今日も寺島さんから説明がありましたが、日本でのビジネスも順調に伸びているようですね。
寺島さま – Zabbix Japan LLC | Interopインタビュー
https://un4navi.com/interview/19027/
アレクセイ:ありがとうございます。Zabbix社は、2005年4月にラトビア共和国のリガ市で設立されました。日本は、海外初の子会社として、2012年10月に東京に支社を設立しました。現在、世界各国に130社以上のパートナーがいて、日本国内のパートナーは51社にまで増えています。
Zabbix Japanのビジネス展開として特徴的な点は、ハードウェアのZabbixアプライアンス製品を提供していることです。また、日本のパートナー各社が、アドオンやエンハンスメントなど、独自のソリューションを提供しているのもユニークな点です。
Zabbix 4.4の新機能や強化ポイント
福原:10月には、Zabbix 4.4がポイントリリースされましたね。
What’s in Zabbix 4.4
https://www.zabbix.com/jp/whats_new_4_4
アレクセイ:はい。新しくGO言語で開発された次世代エージェント、Zabbix Agent 2を提供しました。これは、プラグイン機能や柔軟な監視タイミングの設定、監視データの一括送信による効率良い監視など、柔軟性と拡張性、パフォーマンスに優れています。Zabbixユーザは、データベースやデバイス、Webサーバなどいろいろなリソースを、すべてをモニタできます。
福原:Zabbix Agent 2については、特にアピールなさっていました。
アレクセイ:そうですね、アジェンダを丸々一つ使ってご紹介しましたが、業界で最も優れたエージェントです。メイトリクスやデータベース監視、システムとの接続など、将来的にはすべてのデータが、新しいZabbix Agent 2に集約されるようになるでしょう。
福原:なるほど。
アレクセイ:また、Zabbix 4.4では、外部にHTTPリクエストを送信するWebhookをサポートしたことで、外部サービスとシームレスに連携し、メッセージや障害を通知できようになりました。他にも、TimescaleDBのサポートやダッシュボードの改善、テンプレートなど、さまざまな機能を提供しています。30以上の新機能や改善点を反映させたバージョンです。ぜひ、試していただきたいと思います。
福原:何か、ラトビアでのサミットの時と、今日のプレゼンの内容で変わったところはありますか?
アレクセイ:基本的には、大きな違いはありませんが、Zabbix 5.0を視野に入れた話がいろいろできたと思います。
Zabbix 5.0は、2020年3月リリース
福原:そのZabbix 5.0ですが、いよいよ来年2020年3月にリリースというお話でした。確かに、本国のサミットでは詳しく言及されていませんでしたが、今日のスライドでは、Zabbix 5.0の主な機能や強化点も箇条書きで示されていましたね。
○Zabbix 5.0の主な機能や強化点
・さらなる監視方法とアラートの改善
・クラウドとKubernetes監視を視野に
・ベースラインモニタリング
・セキュリティモニタリン
・可視化とレポート
・パフォーマンスと高可用性
アレクセイ:はい。Zabbix は、2001年から1年半ごとにLTS(Long-Term Support)としてリリースしています。Zabbix 5.0へのロードマップは、残念ながらラトビアでのサミットには間に合わなかったんですが、今日、皆さんにお見せした内容でほぼ固まりつつあります。より高度なイベントの相関やセキュリティ、スケーラビリティ、冗長性などを広くサポートする計画です。
福原:より高い可用性であるHA(ハイアベイラビリティ)や拡張性などについても言及されていましたが、Zabbix 5.0が、4.4や4.2と比較して優れている点はどこでしょうか?
アレクセイ:そうですね…たくさんあり過ぎて難しいですね(笑)。Zabbix 5.0の特長はいくつもあるんですが、大きく3つだけ上げてみましょう。
一つ目の特長は、さらなる監視方法の機能強化です。これは先ほどのZabbix Agent 2の話ですね。数年後には、Zabbixを次のより高いレベルに引き上げてくれると確信しています。
二つ目の特長は、プラグインのフレームワークです。通知やアラート、監視など、よりよいインテグレーションが実現できます。柔軟性も、さらに向上します。
三つ目としては、セキュリティ監視に力を入れています。今は、Zabbixはパフォーマンス監視サービスという位置付けですが、Zabbix 5.0ではこれを拡張し、強化していきます。
福原:さらに信頼性や自由度が上がるということですね?
アレクセイ:はい。ただ、今すでにあることと違って、未来について語るのは、なかなか難しいことです。ユーザビリティやスケーラビリティ、障害検知や自動化、ベースライン監視などについて、いいアイデアやプランはたくさんあります。しかし、次のメジャーリリースに向けて、具体的にどうエンハンスして、どちらへ進むべきか、常にチャレンジです。
最新のロードマップは、公式サイトでご覧いただけます。すべてを詳細に説明したり、確実なお約束はできませんが、少なくとも、弊社が目指している方向はご理解いただけると思います。
Zabbix Roadmap
https://www.zabbix.com/jp/roadmap
一般のクラウドサービスや、Zabbix Cloudについて
福原:ところで、クラウドサービスについては、どうお考えですか?一般のクラウドですが、日本ではまだバズワード的な人気を保っています。
アレクセイ:世界的に見ても、すでに多くの企業がクラウドサービスを利用しています。その一方、自社のデータをクラウドに預けることに、積極的ではない企業も相変わらず多いですね。クラウドは、どんな企業にも合う唯一のソリューションではないので、業種や組織の気質によっても違います。また、クラウドには高い柔軟性があるので、製品やサービスのデリバリサイクルも増やせます。
福原:そうですね。弊社では、ネットワークや回線、バックボーンなどを幅広く提供しています。また、日本国内向けだけですが、IIJ GIOという独自のクラウドサービスを提供しています。Zabbix Cloudについては、日本のマーケットに合うとお考えですか?
アレクセイ:御社が提供しているのは、システム運用全体のフルマネージド型のサービスですよね?そうであれば、ユーザはクラウドかオンプレミスかをことさら意識する必要はないかもしれません。
すべての企業が、システム監視に関する十分な知識を持っているわけではありません。特に、中小企業だと。また、大企業でも、インストールや設定から、監視、管理、7日24時間サポートなど、プロフェッショナルなノウハウを持つサービスに、基本的にアウトソースしています。
顧客のシステム環境を監視するサービスとして、Zabbixを導入している成功事例が世界中でたくさんあります。Zabbix Cloudも、日本のユーザの皆さんのご要望に応えられると思います。
オープンソースが持つ自由と柔軟性
福原:ところで、本国のサミットでもそうでしたが、ZabbixがOSS(オープンソースソフトウェア)であることについて、繰り返し熱心に語っていらっしゃいましたね?
アレクセイ:はい。Zabbixがオープンソースであることは、非常に重要なんです。オープンソースのメリットがすぐには理解できない方もいるかもしれませんが、Linuxが登場したときのことを思い出してみてください。皆がWindowsを使っているのに、可能性を感じてLinuxを使い始める人が出てきました。そして今や、AWSやAzure、Oracleなど、たくさんのサービスでも、世界中で使われていますよね。
オープンソースには、自由と柔軟性があります。これは、皆さんのビジネスにもまた、自由と柔軟性をもたらすことが可能だということです。
福原:なるほど、アレクセイさんの強い信念を感じます。最後に、日本のZabbixユーザやパートナー、これから新しくZabbixユーザになろうとしている人たちに向けて、メッセージをいただけますか?
アレクセイ:Zabbixは、優れたシステム監視のソフトウェアです。グローバルに展開しているサービスなので、アメリカやヨーロッパと同じソフトウェアが、日本でもご利用いただけます。日本の文化的な側面は非常に特徴的で、重要だと感じているので、これからも日本のユーザやパートナー各社との関係は、大事にしていきたいと思っています。ぜひ、実際にZabbixを使ってみてください。
福原:クロージングでは、寺島さんから『来年は、より広い会場で2日間開催するかもしれません』というお話もありました。
アレクセイ:そうですね。ユーザやパートナーなど来場者も増えていますし、いろいろテーマも幅広いく充実しています。詳細は未定ですが、ご期待ください。そして、日本の皆さんも、チャンスがあればぜひラトビアの首都リガまで足をお運びください。
福原:ありがとうございました。
Zabbix Japan
https://www.zabbix.com/jp/